野村一夫『社会学感覚』(文化書房博文社、1992年、増補版1998年)詳細目次

『社会学感覚』(文化書房博文社、1992年・増補版1998年)

『社会学感覚』は、はじめて社会学を学ぶ人のためのテキストです。1990-1991年に執筆、1992年に文化書房博文社から初版刊行、6刷を重ねたのち、1998年に増補版を刊行した社会学入門書です。
増補版では、560ページ分が初版そのままで、そのあとに「ブックガイド・九〇年代の社会と社会学」が690ページまで増補されています。ソキウスでは増補分の「ブックガイド・九〇年代の社会と社会学」を分割して各章の末尾に掲載することにしました。章立ても若干変更しました。つまり、ここに展示されているのはウェッブ用に再編集したものです。

第1部 社会学論──自己反省のための科学

▼第1章 脱領域の知性としての社会学

1−1 社会学のマッピング
現代社会学の研究領域
社会学はなにを研究する科学か
社会科学との関係
脚注

1−2 エートスとしての社会学感覚
脱領域の知性
本源的社会性の公準
社会学感覚
脚注

自己言及の問題
(1)対象である社会が、意識をもった人間から構成されている
(2)対象である社会に、観察主体がすでにふくまれてしまっている
(3)研究自体が、対象である社会を変えてしまう可能性がある
(4)人はみな醒めている分だけ社会学者である
脚注

ふたつの知識
情報としての知識
明識としての知識
明識の意義
脚注
脱社会学化
社会学的な感受性
知識人論
社会学の自己言及性

▼第2章 日常生活の自明性を疑う

2-1 自明な世界としての日常生活
発想法としての社会学感覚
日常生活の自明性
危機――日常性の崩壊
宗教的構図
クリーシェ/ステレオタイプ


2-2 異邦人のように
常識を疑う
裏返してみる
異邦人の眼で見る
距離化する
ブレヒトの異化効果


2-3 歴史的時空間のなかへ
比較社会学/歴史社会学
文化相対主義


2-4 日常生活批判へ――物象化と脱物象化
貨幣・神・国家
存立構造論という問い
社会学的反省――脱物象化の知的可能性
増補
脱常識の社会学

▼第3章 行為の意味を理解する

3-1 歴史的世界の形成者としての人間
行為の集積としての社会
社会的現実の構成


3-2 動機を理解すること
動機の理解
動機とはなにか
状況の定義


3-3 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
「プロ倫」とは
理念と利害
方法としての「理解」


3-4 「文化の悲劇」と「意味喪失」
行為の主観的意味と客観的結果
「軸の転回」と「文化の悲劇」
ウエーバーの意味喪失問題


3-5 コミュニケーション過程としての社会
社会のラングとパロール
都市社会におけるさまざまな意味世界
参与観察
生活史法
増補
ウェーバー再入門
意図せざる結果
ルポルタージュを読む

▼第4章 社会現象を総合的に認識する

4-1 社会現象の総合的性格
「プロ倫」の教訓
消費行動の総合性
部分社会の総合性
連字符社会学の構想と現状
医療社会学の場合
ミクロとマクロをつなぐこと――社会学的想像力


4-2 全体社会の理論としての社会学
全体社会と社会理論
総合社会学
マルクス主義
社会学主義


4-3 社会システム論の発想
すべてはすべてに関係している
社会システム論の根本的修正
「一般理論」か「グランド・セオリー」か
増補
マクロ社会学
システム論
世界システム分析

▼第5章 社会現象における共通形式を抽出する

5-1 類型化──日常的認識と科学的認識
日常生活における類型化
社会学的認識における類型化


5-2 方法としての理念型
理念型
個性的(歴史的)理念型
類型的(社会学的)理念型
流動的推移の論理


5-3 形式社会学の発想──同型性
人間相互の関係形式に関する科学としての社会学
さまざまな「形式」
増補
ジンメル再評価

▼第6章 同時代の社会問題に関わる

6-1 実践的志向
全体的認識と実践的志向
社会問題への理論的歴史的関心
実験室としての都市
政策的関心・臨床的関心・運動的関心


6-2 社会問題とはなにか
社会問題論のキーコンセプト
社会問題と価値判断
視点の闘争
公式的見解
状態ではなくプロセスとしての社会問題
触媒機能を果たすもの――社会運動・ジャーナリズム・科学


6-3 時代診断の学としての社会学
社会学の役割――潜在的社会問題の発見
社会学的時代診断
ロマンティシズムをこえて
両義性の緊張に耐えること
増補
社会構築主義
社会学的時代診断

▼第7章 社会とはなにか、社会学とはなにか

7-1 社会概念+社会学構想のセット
社会概念と社会学構想
社会学史の六つの段階
(1)「総合社会学」
(2)「世紀の転換期の社会学」
(3)「シカゴ学派」社会心理学/都市社会学
(4)「批判理論」「知識社会学」
(5)社会学的機能主義
(6)現代社会学


7-2 社会についてのメタファー
複合概念としての社会概念
秩序としての社会
プロセスとしての社会
言語としての社会/劇場としての社会


7-3 社会学と民主主義
パラダイム並立の歴史的事情
(1)マルクス初期草稿・中期草稿の発見
(2)「世紀の転換期の社会学」受容の問題
(3)ユダヤ系社会学者の追放と亡命
(4)社会主義社会の社会学
民主主義と社会学の選択的親和性
各論の構成
増補
近代社会と社会科学
言説としての社会
社会学概説書


第2部 人間論──他者との関係の産物としての個人

▼第8章 自我論/アイデンティティ論

8-1 「わたくしといふ現象」
『春と修羅』序詩に学ぶ
「わたくし」とはなにか


8-2 自我の社会性
鏡に映った自我
自我の多面性
自我の主体性


8-3 アイデンティティ
「わたしはわたしだ」という思い
アイデンティティ・クライシス
モラトリアムとしての青年期
社会的弱者とアイデンティティ
増補
集団的アイデンティティ

▼第9章 役割現象論

9-1 役割の担い手としての人間
現代人のアイデンティティの中心をなしているもの
役割概念と役割理論


9-2 役割現象とはなにか
als(として)規定
相互作用の媒体としての役割
役割概念の定義
さまざまな役割類型


9-3 社会化と役割取得
子どもの社会化
大人の社会化-第二次社会化
役割形成としての役割取得


9-4 さまざまな役割現象
役割葛藤と社会学的アンビヴァレンス
役割のずれ
役割距離
行為と表現のディレンマ
役割能力
増補
役割行為論


第3部 コミュニケーション論──送り手ではなく受け手の第一次性

▼第10章 コミュニケーション論/ディスコミュニケーション論

10-1 コミュニケーションの常識モデル
はじめに
情報のキャッチボール
コミュニケーションの常識モデルの問題点


10-2 コミュニケーションとはなにか
身ぶり会話としてのコミュニケーション
人間的コミュニケーション
コミュニケーションの本質についての中間考察


10-3 ノンヴァーバル・コミュニケーション
ノンヴァーバル・コミュニケーション
ノンヴァーバル・コミュニケーションの文化的相対性


10-4 ディスコミュニケーション
理想状態としてのコミュニケーション
さまざまなディスコミュニケーション
増補
ハバーマスのコミュニケーション行為論

▼第11章 マス・コミュニケーション論

11-1 コミュニケーション・メディア
メディアとはなにか
メディア特性
マス・コミュニケーションの特質
マスコミ研究の諸分野


11-2 マス・メディアの影響
マス・メディアの影響は絶大か?
強力効果説[弾丸理論・皮下注射効果モデル]
限定効果説[パーソナル・インフルエンス論]
複合影響説
視点の転換


11-3 受け手の能動性
コミュニケーションの脱物象化のために
マス・メディアの〈利用と満足〉
〈受け手の能動性〉対〈メディアの影響〉
増補
メディア論
歴史社会学的なメディア論
マス・メディアの複合影響説
情報操作
メディア・リテラシー
ネットワーク・コミュニケーション
インターネット
インターネットと市民性

▼第12章 ジャーナリズム論

12-1 ジャーナリズムの理念と「知る権利」
マスコミとジャーナリズム
ジャーナリズムとはなにか
民主主義と権力のはざまで
知る権利
ジャーナリズムが「正義の味方」にみえるとき
ジャーナリズムは「正義の味方」か?


12-2 ジャーナリズムの現実問題
理念から現実へ
誤報・虚報・ねつ造・やらせ
スキャンダリズム・センセーショナリズム・エモーショナリズム
プライバシーと人権の侵害
ステレオタイプ
劇場型犯罪
総ジャーナリズム状況
発表ジャーナリズム


12-3 〈未完のプロジェクト〉としてのジャーナリズム
ジャーナリズムの理念復権のために必要なこと
社会的勢力からの自立
ジャーナリスト教育の問題
ジャーナリストの内部的自由
受け手の明識
メディアの自己反省
増補
ジャーナリズムの社会学へ
TBSオウムビデオ問題
松本サリン事件報道
政治報道とメディアの公共性
女性とメディア(メディア・セクシズム批判)
ネットワークとジャーナリズム

▼第13章 流言論

13-1 非合理的心性のメディアとしての都市空間
クチコミの反乱としてのうわさ
都市伝説と現代民話
現代のうわさ/流言
オルレアンのうわさ
神話もしくは物語の変奏
うわさの法則


13-2 即興的につくられるニュース
うわさについての常識
ニュースの一形式としてのうわさ
うわさとの関わり方
うわさの合理性
増補
うわさ研究入門


第4部 集団論──人と人とのつながりの多層性

▼第14章 現代組織論

14-1 組織の原理としてのビューロクラシー
よそよそしい組織という経験
組織とはなにか
ビューロクラシーとはなにか
テーラー・システム
支配の一形式としてのビューロクラシー


14-2 組織内集団のダイナミズム
インフォーマル・グループ
派閥・ネポティズム・共謀関係
準拠集団(リファレンス・グループ)


14-3 組織文化と日本的集団主義
日本的経営
日本的経営の本質としての集団主義文化
日本的集団主義の特質

14-4 組織の犯罪と集合的無責任
組織体犯罪
集合的無責任の生成-旧国鉄組織の場合

14-5 ネットワークと自己組織性
ネットワーク組織論
自己組織性
増補
組織社会学の概説書
日本の組織
「もんじゅ」と動燃の組織問題
システムの信頼
情報開示と信頼
ネットワーク分析

▼第15章 現代家族論

15-1 家族機能の変容-伝統家族と現代家族
伝統家族の機能
現代家族における家族機能の縮小
ゲマインシャフトとしての家族


15-2 家族の役割構造-共働きによる構造変動
性別役割分担
新・性別役割分担と女性の二重役割


15-3 家族による看護と介護
家族における老人の介護担当者
対策の方向性


15-4 多様に開かれた家族
家族の比較社会学/歴史社会学
「近代家族」の理念型
ライフスタイルとしての家族
増補
家族社会学再入門
結婚の社会学
高齢化


第5部 文化論──記号消費時代の合理性と非合理性

▼第16章 消費社会論

16-1 文化現象としての消費
なぜ〈消費〉が社会学の問題なのか
物語消費


16-2 記号消費の時代
ボードリヤールの消費社会論
消費はもはやモノの機能的な使用や所有ではない
消費はもはや個人や集団の権威づけの機能だけではない
消費は言語活動である


16-3 記号論的解読-シニフィエとシニフィアン
記号論とはなにか
シニフィアンとシニフィエ
記号としての商品
広告の機能
差異化のコード


16-4 都市の劇場空間化
都市空間の記号性
〈舞台=劇場空間〉としての都市空間の演出
物語マーケティング/シーン消費
増補
消費社会の変容
サブカルチャーの内在的理解のために

▼第17章 宗教文化論

17-1 日本人の宗教意識
宗教への視点
日本人は無宗教か
自覚と現実行動の不一致
企業と国の宗教感覚
普遍宗教と民俗宗教
多重信仰+シンクレティズム


17-2 宗教の本質──カリスマと聖なるもの
宗教の原点としてのカリスマ
究極的意味の世界としての宗教
宗教の機能
宗教は非合理か


17-3 世俗化から宗教回帰現象へ
世俗化論
日本の宗教回帰現象
消費社会における幸福と不幸
増補
宗教社会学の概説書
日本人の宗教意識
オウム事件の衝撃
宗教報道

▼第18章 音楽文化論

18-1 合理化の産物としての近代西欧音楽──歴史社会学的視点
合理化・聴衆・複製技術・消費文化
ウェーバーの合理化論
西欧音楽の合理化


18-2 近代的聴衆の誕生──オーディエンス論的視点
「音楽の正しい聴き方」
十八世紀音楽の聴かれ方


18-3 複製技術時代
一九二〇年代
複製技術時代の芸術作品
音楽の変容


18-4 消費社会における音楽文化
戦後の音楽状況-テクノロジーと若者文化
若者文化の変遷
一九七〇年代音楽の転回
一九八○年代日本の音楽状況
増補
音楽社会学入門
九〇年代日本の音楽状況


第6部 権力論──権力は身近な生活の場に宿っている

第19章 自発的服従論

19-1 服従の可能性としての支配

権力論の課題
ジンメルの「上位-下位関係」論
ウェーバーの支配社会学
自発的服従

19-2 歪められたコミュニケーション

歪められたコミュニケーションの三形態
強制指導型コミュニケーション
環境制約型コミュニケーション
管理抑制型コミュニケーション
民主主義的な権力形成のために必要なこと

19-3 権力作用論

暴力的悪としての権力
「見られる権力」から「見る権力」ヘ
みえない権力・微視的権力・関係的権力
権力作用論の意義
増補
日本社会における自発的服従の現実
都市と権力

▼第20章 スティグマ論

20-1 社会的弱者を苦しめる社会心理現象

役割としての社会的弱者
偏見
ステレオタイプ
レイベリング
差別
問題点

20-2 関係概念としてのスティグマ

スティグマとはなにか
現代日本における老い
周囲の否定的な反応としてのスティグマ
六つの「老人の神話」

20-3 スケープゴート化

排除による秩序形成
大量排除現象
近代日本の排除現象
ヴァルネラビリティと有徴性
中間考察
増補
排除現象

▼第21章 暴力論/非暴力論

21-1 さまざまな暴力概念

暴力とはなにか
犯罪的暴力
暴力のコミュニケーション論的解読
国家的暴力
戦争・警察・死刑

21-2 構造的暴力と積極的平和

平和研究における平和概念
教育・労働・性・マスコミの現場における構造的暴力

21-3 非暴力的行動

暴力のダブル・スタンダード
非暴力的行動の意義
非暴力的行動の技術
理論的根拠としての正当性根拠のほりくずし
増補
犯罪を社会学する
性暴力とセクシュアル・ハラスメント
死刑

▼第22章 ジェンダー論

増補
女と男について考え始める
ジェンダーの社会学[総論]
フェミニズムの争点
男性学

第7部 社会問題論──だれにとって「問題」なのか

▼第23章 薬害問題の構造

23-1 日本の薬害問題

社会問題としての薬害
サリドマイド事件
スモン事件
クロロキン事件
その他の薬害問題

23-2 企業逸脱と専門家支配

製薬企業
企業逸脱
企業逸脱の仮説
厚生省の問題
専門家支配

23-3 社会的現実構成過程としての薬害認定

スモン被害者の役割変遷
薬害の認定

23-4 知識としての薬

消費社会における薬
薬の本質
情報公開
増補
薬害エイズ事件の社会問題化
薬害エイズとは何か
薬害エイズ事件の経過
院内感染
陣痛促進剤
専門家支配
裁判過程の社会学
科学報道

▼第24章 社会学的患者論

24-1 医学パラダイムの成果と限界

医学パラダイムの成果
医学パラダイム内部の問題点
医学パラダイム外部の問題点

24-2 病者役割と障害者役割

病気と障害の混同
病者役割
慢性疾患などの場合
障害者役割
障害の定義

24-3 新たな〈医者-患者〉関係

〈医者-患者〉関係のモデル
組織医療と葛藤構造

24-4 患者の権利

基本構図
患者の権利宣言
インフォームド・コンセント

▼第25章 医療問題の構造

増補
医療について考え始める
文化現象としての医療
医療社会学
医学の不確実性
医療人類学
社会史的研究とフーコー
女性と医療
ヘルシズム(あるいは健康幻想)
脳死
病院死

▼第26章 教育問題の構造

増補
大衆教育社会
教育言説の分析
いじめ
不登校・登校拒否
大学問題
反学校文化 実践の共同体への参加過程としての学習 新しい教育理論

▼第27章 環境問題の構造

増補
環境社会学・概説
生活環境主義
受益圏と受苦圏
社会的ジレンマ
環境問題報道 災害社会学


第8部 社会構想論──公共哲学としての社会学

▼第28章 市民社会の再構築

増補
社会構想と「公共哲学としての社会科学」
市民的公共圏
公共圏のモデルとしてのコーヒーハウス
ネットワーキング
社会運動論
市民社会とシティズンシップ
近代とは何か
リフレクションの思想

▼第29章 国際社会学

増補
国際社会学入門
冷戦後の国際社会
社会主義と資本主義
民族問題と宗教問題
ナショナリズム
EUと脱国家
グローバリゼーション
オリエンタリズム
地図としての社会
世界市民社会の構想

▼あとがき(初版+増補版)

社会学教育についての反省
本書の方針
ジャーナリズムの社会学化
社会学のジャーナリズム化
理論的方針
本書への自己反省
謝辞
社会学的リテラシー構築のために(増補版)


▼索引(初版)


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